AbemaTVに出演した若い人が「挨拶は強制すべきではない」と発言したことによって、
ツイッターでたくさんの反発を招いたそうで。
「経験則で、挨拶もろくにできない人は社会においてやばい奴である場合が多い」
「組織内の円滑なコミュニケーションのきっかけとして挨拶は有意義」
といったような批判があったそうで、これもこれとして間違っていないと思いました。
私は当初、どうでもいいな(挨拶を否定したい人がいたっていいな)と思ったのですが、
その起点となった若い人が、ヤフーニュース記事で釈明していて、それが非常に興味深かったです。
その人曰く、「私は挨拶が重要だと思ってるし、挨拶はします」ということで、
「そうだったのか!」と驚きました。
挨拶の意味としては、
1、相手の状態を知ることで、田舎などのコミュニティ内の安全が図られる
2、組織内で、接点の薄い相手にも気軽に話しかけるきっかけになり、コミュニケーションが円滑になる
ということをおっしゃっていて。
私も「1」はあるよなぁ、だから挨拶は意味あるんだよな、と思っていたので、
そこまでわかっていて、「挨拶は強制すべきではない」と言っている、ということで、「ほほぅ、面白いな」と思いました。
さらにその人が言うには、
武士道には「礼」と「徳」の概念があるが、
「礼」は「法」で、「徳」は規則の枠外の、個々人の自発的なモラルとしての概念である。
よって、挨拶という「礼」を強制することは誤りで、挨拶は「徳」としてあるべき。
→「挨拶を強制すべきではない」
というロジックらしく、なるほど、筋は通ってるなと思いました。
この辺で興味深いテーマは、「礼」の行使をどこまで制度的に押しつけるか、だと思います。
彼は、「挨拶を強制する会社」と「挨拶を強制せず、社員が自発的に挨拶する会社」の両方を経験したが、後者の方が社員が活き活きと働いていた、と言っていました。
なるほど、「挨拶を制度的に強制すると」「抑圧的になる」というのは心理的に確かにあると思います。
ただ、私が思ったのは、
「挨拶を制度的に強制する」ことにも意味があると思っていて、
この若い人は「挨拶の意味」をよく知っている前提で話していると思いますが、
世の中には、ナチュラルに「挨拶の意味を知らない」人もいるわけです。
挨拶の意味をわからずに、盲目状態で「挨拶ナシ」をした結果、
職場がギスギス、コミュニケーション不全になって、結果仕事がはかどらない
ということも実際に起こりうることです。
なので、「挨拶の意味がわかっている人」「挨拶の意味をわかっていない人」
いろんな社員がいるなかで、
制度的に、「お前ら必ず挨拶しろよ!」という強制をすることによって、
コミュニケーションにおける、社員の質を一定以上に保つことが担保されうるのです。
Abemaに出た彼は、頭がよさそうなので、「そういう背景(必要にかられた組織の社員管理手法)」についても、わかっているはずだと思うんですが、
その背景を踏まえた上で、「挨拶は強制すべきではない」
イコール「挨拶を強制するような会社は誤っている」と、
一刀両断しているところが、なんかファンタジックで面白いなと思いました。
例えば学校でも、勉強が得意な生徒がいれば、勉強苦手な生徒もいるし、長時間机に付いていることさえもストレスでできない生徒もいるわけです。
そういう生徒の「読み書き能力」=「社会で生活するための必須能力」を、
一律的に、一定水準以上を保つために
「お前ら、余計なことは考えずに先生に従って勉強しろよ!」
ということも、問題はあるけど、社会的には意義はあるんです。
「自分からは勉強やらないけど、学校に強制されて勉強したから、一応、漢字が読めるし、お金も計算もできる。それは良かった」
と思う生徒も、いると思うんですよね。
そういう「強制されて、矯正されることによって、利を得る」人も確実に居ます。
世の中の人が、すべて自己責任で、問題をクリアできるわけではないということです。
なので、この辺のさじ加減は、非常に難しい問題です。解がわからない。
既存の制度や、慣習に批判的な立場を取る前に、
古い人間、新しい人間が共に、最適解を模索するような、
平和なやり方があると、いいなぁとおじさんは思います。
客観的に見て、「意見言って」「SNSで炎上して」「釈明して」っていうの
効率が良いと思いますか?
問題提起する度に、大騒ぎするのって、もはや「大騒ぎしたいだけでは?」とさえ思います。
この辺は個人の趣向なのですが、
普通に、フラットに、議論すればいいんじゃないでしょうかね。
お互いの立場を鑑みて、適切な言葉を選んでいく。
ドイツのメルケルさんは、西ドイツの人間と、東ドイツの人間(まったく社会環境が異なる者たち同士で)、で忌憚なく、ドイツの将来について議論したそうですよ。
欧州のマネをすればいいわけではありませんが、議論は誰でも普通にできることです。
グループ間で対立して、ホットなおしくらまんじゅうする。
それが日本流なのか、「めんどくせえな」と思ってしまいますが、
楽しい人もいるんでしょう。
おわり