独裁国家の幹部Aさんにインタビュー

私「本日は貴重なお時間を頂戴し、ありがとうございます」

A「よろしくお願いします」

私「では早速ですが、Aさんは現在の地位をどのように築かれたのでしょうか?」

A「私は元々、裕福な家に生まれ、父親も我が国の高官でありました。父親の言うことに従うことが自分の義務だと思い、努力した結果だと思います」

私「そうですか、実際にはどのような努力をされたんですか?」

A「政府に入って間もない頃は、上司の利益となることは何でもやりました。上司の懐に入らなければ、出世は見込めませんから」

私「それで、今の地位を築かれたということですね。上司の方はどんな方でしたか?」

A「とても力のある人でした。厳しい要求が来ることはしょっちゅうでしたが、それに応えなければ、私の存在意義はありません」

私「上司の方と、Aさんの間に意見の相違があったことはないですか?」

A「私の意見がどうこうではなく、上司から見て、私に利用価値があるかどうかが重要なのです」

私「そうなると、Aさんは都合の良い操り人形になると思いますが、それは問題ないのですか?」

A「上下関係というのはそういうものです。操り人形であっても、出世すれば、権力と金が効率よく手に入りますから何も問題はありません」

私「そうですか、Aさんは権力と金があれば幸せということですか?」

A「あと愛もあれば最高ですが、とりあえず権力と金がない、というのは大変みじめで、不幸なことだと思いますよ」

私「なるほど、では先ほどの話に戻って、もし上司の方が誤った道を選択していたとすると、あなたはどうされますか?」

A「上司は、偉大なる王の指示を受けて動いています。王は絶対なので、道を誤るということはありません。王の道が、正しい道なのです」

私「あなたの国では、多くの国民が飢餓・貧困に苦しんでいるようですが、それについてはどう思いますか?」

A「それはその国民に、王への愛と忠誠が足りないからです。自業自得です」

私「国民に王への愛と忠誠がもっとあれば、食料が行き渡るということですか?」

A「そうです。ただ、王の繁栄のためには、ある程度の犠牲は仕方ないでしょう」

私「王の操り人形であるあなたは、その犠牲が増えることを助長していませんか?」

A「それは知りません。王は正しいし、王に尽くすことも正しいのです」

私「ではもし、王やあなたがいなくなったら、どのような国になると思いますか?」

A「王や私がいなくなっても、権力と金を欲する人間はいくらでもいます。代わりの人間が同じことをするだけでしょう」

私「なるほど、飢餓や貧困をなくすには、国民皆が王への愛と忠誠を持った上で、努力や工夫をするのが良いということですね」

A「王の意思に背くことは禁じます。王が許す範囲でならいいでしょう」

私「わかりました、なかなか難しい世の中ですね」

A「何も難しくはありません。王は正しく、国民は王を支えるために努力する、それだけですから」

私「そうですか、インタビューはここまでになります。ありがとうございました」

 

 

(エンディングテーマ)

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