刑法を読んでみようのコーナーその7です。
刑法「総則」の第7章「犯罪の不成立及び刑の減免」を取り上げています。
■自首等
刑42条1
罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
刑42条2
告訴がなければ公訴を提起することができない罪について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも、前項と同様とする。
今回が刑法を読んでみようのラストになります。
途中から目的が果たせないと気づいてブランクが空いてしまいました。
では行ってみましょう~。
まず自首とは、警察に捕まる前に罪を告白しないと成立しません。
取り調べで自白しても、すでにバレてる罪においては自首にはならないとのこと。
「捜査機関に発覚」とは、「警察が犯罪事実&犯人が誰であるか、の両方がわかっている」状態のことです。
次に、自首による刑の減軽の考え方・・・
・捜査と処罰を容易くするため
・冤罪発生の危険性を回避するため
・犯人の罪を悔い改める心に対する情状を認める
こんな感じです。
警察の「犯罪捜査規範」には、自首があった場合には次の3点に注意せよと書いてあります。
・すでに発覚してる犯罪ではないか?
・真犯人を守るための身代わりの自首ではないか?
・犯人が、自分の他の犯罪を隠すための自首ではないか?
刑42条2の「告訴がなければ公訴を提起することができない罪」について
これを「親告罪」と言います。以下のケースがこれに当たります。
・事実が公になると被害者に不利益が生じるおそれのある犯罪
・罪責が軽微、又は当事者間で解決を計るべき犯罪
・親族間の問題であり、介入すべきでない犯罪
・著作権や税法違反の罪
最後に、犯人の自首によって刑を減軽するかどうかは、裁判所の自由裁量となっています。
説明は以上です。
自首に関して注目するポイントは、刑の減軽を特典扱いにしている所ですね。
「逃げきろうという意志を失った」犯人の損得勘定を利用して、
捜査・処罰の手間とリスクを軽減しようという趣旨です。
刑を減軽することによる悪影響はどの程度のものなのか・・・
この悪影響(マイナス面)とプラス面を天秤にかけてみたいと思います。
仮にこの世の犯罪者が全て自首をするとした場合、どのような世界になるか。
まずプラス面として警察の手間が大幅に減りますね。
裏付け捜査は残るとして、トータルの捜査の手間は1/3くらいになるかな?
これに伴って犯人の刑が減るケースが多く発生します。
そもそも刑の量はどうやって決めてるのかと調べてみたら、
裁判所が、刑法に定められている例えば「殺人罪・・・死刑又は5年以上の懲役」
からスタートして、再犯か?刑法の減刑対象か?などの足し算引き算をして、
あと過去の判例から飛び出ないように色々考えて決定しているそうです。
そもそもそもそも刑の意味とは、
・国家的な応報
・犯罪抑止・再犯の予防
とのことです。応報としての量刑(刑の量を決めること)は、上記の裁判所の
計算で良い具合にできるでしょうが、再犯の予防となると話は別のような気がします。
再犯の予防の観点における、適当な刑の量とは、統計が基礎にあるべきだと思います。
それぞれの犯罪の種類ごとに犯罪の総数を分母として、
縦軸に「再犯率」、横軸に「刑の量」としたグラフを書いてみたらどうなるか。
左が高く、右にいくほど低くなるのかな?
今私が言いたいことを別の言い方をすると、
万引き犯を30年の懲役にしたらどうなるか?殺人犯を1年の懲役にしたらどうなるか?ということです。
前者は国家を怨み、後者は殺人のプロになるかもしれませんね。
あとやたら刑を重くしたら、刑務所を作ったり維持するコストが増えるという点も見逃せませんね。
刑が少なくて、犯罪の抑止や再犯防止が実現できれば、それに越したことはないということです。特に再犯防止は、知恵の使いどころだと思います。
ここまで刑法「総則」第7章を振り返ってみて・・・
犯罪というピッチャーの球を後ろに逸らさないキャッチャーって感じですね。
「国民をどうにか操作しよう支配しよう」という感じは少ない印象です。
だって官僚や学者が作ってるんだもの!
ここには宝はなかったけど、色々勉強できてよかったです。