成田悠輔さんの「22世紀の民主主義」感想文

成田さんの「22世紀の民主主義」を読み終えたので感想を書きます。本1冊をちゃんと読み終えたのは久しぶりなので、達成感がありました、うれしいです。

(要約)

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ここ20年間で、民主主義の機能不全が見られるため、既存制度の枠内で努力するより、ルール自体を変えることが大事だ。そのための手段は以下の3方向が考えられる。

①民主主義との闘争

(1)ガバメントガバナンス(インセンティブ制による政府統治)

(2)SNS等のWebコミュニケーションの規制

(3)選挙制度の改善(年齢制限、投票者区別、政策論点別投票、新投票UI/UX)

②民主主義からの逃走

政治的デモクラシー・ヘイブン(私立国家群の誕生により多元性と競争性がもたらされ、政治制度が商品化される)

③まだ見ぬ民主主義の構想

【無意識データ民主主義とは】

(1)主に半意識・無意識からの多角的・高解像度の民意データを基に、アルゴリズムを用いて目的発見・価値判断を行う(データの平均化・アンサンブル化により精度を上げる)

(2)エビデンスに基づく政策立案を行う

【無意識データ民主主義の機能性】

●平均化・アンサンブル化されるアルゴリズム群により、多元性と競争性が備わる

●「エビデンスに基づく政策立案」に長期の成果指標を組み込むことにより、未来・外部・他者に向かった政策立案が可能

●多角的な民意データ抽出により、SNS等で汚染された有権者意識による影響を、半分除去可能

【無意識データ民主主義の運用ポイント】

●各政策論点に対して全有権者が同じ影響力を持つ必要はないが、1人当たり総影響力は平等としなければならない

●無謬主義により閉塞した社会状況を、(ランダム選択を含む)アルゴリズムは実験・学習により進化し乗り越えることができる

●政党や政治家が密室で行っている政策パッケージ作成作業を省き、無数の争点と直接的に対峙できる

●ウェブ直接民主主義と比較して、多数の政策論点の同時並行処理が可能で、有意識的な投票・選挙が作り出す同調やハック・分断も緩和できる

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(感想)

①民主主義との闘争

外国では、色々試しているようなので、日本もできそうなものを適当にやってみるのもいいと思います。やってるうちに、政治への監視が強まればそれはそれで良いプレッシャーになるかもしれません。

②民主主義からの逃走

Web3とか、この私立国家の基盤を支える役割を果たしそうで、かなり現実味がある話だな、と思います。既存のクラシック国家と、新興国家が綱引きして、世界が混乱する未来が見えます。私はクラシック派なので、その時は「しょうもないからさっさと混乱を収めよう」とか言うと思います。

③まだ見ぬ民主主義の構想

これは、私が推してる超監視社会と通じるものがありますね。やっぱり未来を歩くなら、必ず通るような道だよなぁと再確認しました。このパートが一番情報が詰まってて、成田さんもこれが一番書きたかったのかなぁと思います。この民主主義の形に関しては、国が社会主義的になっていくのではないかと思います。私個人はそれでもいいんですが、資本主義ガチ勢は納得するだろうか?無意識データ民主主義との対決姿勢を鮮明にして、歯車がガッチリ噛んで動かなくなる、とかそういうシナリオを懸念しました。しかし、そういう問題も、時間をかけて調整していけばクリア可能かな、と思います。どういうタイムラインで社会に実装していくか、という点は、たくさんの頭の良い人が考えて綿密に計画する必要があると思いました。

 

総じて、アイディアとして面白いし、詳しくて読んでためになったなぁと思います。個人的には、人力でやるのも好きなので、人+アルゴリズムの二人三脚が楽しいなぁと希望してます。未来はどうなることやら。