刑法を読んでみようのコーナーその4です。
刑法「総則」の第7章「犯罪の不成立及び刑の減免」を取り上げています。
刑39条1
心神喪失者の行為は、罰しない。
刑39条2
心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。
おぉーなんてシンプルなんだ。
今回は、「心神喪失」と「心神耗弱」の定義について知れば、理解したことになりそうです。
調べてみたところ・・・
精神病や飲酒・薬物中毒により、善悪の判断能力(事理弁識能力)又はこの判断に基づいて行動する能力(行動制御能力)が失われているケースを指すとのこと。
この能力が、全く無い状態を「心神喪失」
この能力が、普通の人より著しく劣っている状態を「心神耗弱」と言うそうです。
なるほど~
ちなみに酔っ払い運転で人をひき殺してしまった場合は、
「酒を飲む前にこのことが予見できた」という点から、心神喪失には当たらないという判例が存在します。
又、精神病=心神喪失ではありません。
5人を殺害した統合失調症の男の裁判では、
・犯行当時の病状
・犯行前の生活状態
・犯行の動機
・犯行の様態
を総合して心神喪失に当たるか判定すると裁判官は言ったそうです。
ここで課題が浮き上がってきます。
心神喪失で不起訴・無罪になったケースで、問題になるのが再犯の可能性です。
2001年に大阪府池田市で起きた「小学校児童・教師23人殺傷事件」は、
犯人の男がその前の別の事件で「統合失調所による心神喪失」と判定され不起訴
→措置入院(自分や他人を傷つける恐れのある精神障害者を強制入院させること)
→1か月後に退院
→その後23人殺傷事件を起こしたというものです。
この事件を受けて、
2005年「心神喪失者等医療観察法」という法律が制定されました。
これは心神喪失によって裁判で不起訴・無罪などになった案件に対して、
検察官の申し立てにより、裁判官と精神科医が措置入院の必要性を審判するものです。
「必要あり」とされた場合は、通院or入院を決めて指定病院に移されます。
退院した後も保護観察所による観察が原則3年続きます。
又、裁判の前に行われる検察の精神鑑定結果を却下する場合もあります。
つまり「責任能力あり」という審判により、検察が起訴に踏み切るというケースも多く存在します。
ふぅ~一休み。
弁護士の人がよく「責任能力なかった」という主張で無罪にしようとしているのをニュースで見て、いつも「それっていいのかなぁ」と思ってしまいます。
「心神喪失なら無罪」という枠に押し込めるような、本来の法の趣旨から外れる運用なのではないか?という感覚です。
そもそも事件を起こした人に味方する弁護士って正義なの?という根本的な疑問があります。
裁判官が事件を客観的に見て、犯罪性と非犯罪性の両サイドを考慮して審判を下すことは不可能なのかなぁ。
一人の脳みそでそれをやれないことは無いと思うのだけど・・・「客観的な視点に耐えうる」公平性を担保するという意味で、分業体制は必要ということかな。
弁護士だけ見ると悪の味方みたいだけど、裁判官・検察・弁護士の三者でワンセット(=公平な審判を下すシステム)と考えれば、高い報酬を貰ってるのも納得できます。
「オレが一人で調べて、一人で正しいジャッジを下してやるよ!!」というスーパー裁判官の映画とかあったらカッコイイから観に行くのになぁ。
話が心神喪失からズレてしまった・・・このテーマはまだつっつく余地がありそうです。それはまた今度にします。