刑法について考えてみた その3

刑法を読んでみようのコーナーその3です。

 

刑法「総則」の第7章「犯罪の不成立及び刑の減免」を取り上げています。

 

■故意

刑38条1

罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。

 

刑38条2

重い罪にあたるべき行為をしたのに、行為の時にその罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。

 

刑38条3

法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することができる。

 

今回は、あまり専門用語が出てこないので、ちょっと長いけど文章としては読みやすいですね。

 

そもそも「故意」とは何ぞ?と調べたところ、イコール「罪を犯す意思」だそうです。

 

刑法では原則として「故意犯」しか罰しない決まりになっていて、故意ではない「過失犯」は特別に規定がある場合に限り罰することになっているとのこと。

 

過失罪には、「過失傷害罪」や「過失致死罪」などがあります。ニュースでよく耳にするフレーズですね。

 

専門用語が出てこないと言ったけど、このテーマにおいて、「故意と過失の境界」はどのようなものか?を正しく知らないと理解したことにはならないようです。

 

故意の定義とは・・・

【その人が自分の行為において、「刑法の条文において規定されている構成要件(※)に該当する」という客観的事実を認識しながら、敢えて行為に出ること】だそうです。

 

※「構成要件」とは・・・

例えば窃盗罪の条文

「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」のうち、この「他人の財物を窃取した」が構成要件に当たります。

 

調べたサイトの解説によると、

構成要件に当たると認識していたかどうか、の判断は容易ではないそうです。

これを突き詰めていくのが大学の「刑法」という科目の趣旨とのこと。

 

例えば・・・

コンビニの傘立てに傘を置いて、買い物後に取ろうとしたら同じような傘が何本もあって自分のものがわからなくなった。

これだろうと思って適当にひとつの傘を家に持ちかえったが、よく確認してみるとそれは自分の傘ではなかった。

 

この場合は窃盗罪の構成要件「他人の財物を搾取した」に当たることを認識していたと言えるでしょうか?

 

答えは、故意には当たらない(過失)というジャッジになります。

 

でも結果的に盗んでるじゃん!とツッコミを入れたくなりますが、「過失」はセーフなのです!

 

なるほど~ここまでの理解で、再度「故意」の条文を読み返してみます。

 

■故意

刑38条1

罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。

>故意でない場合は罰しない、特別な規定「過失罪」に当たる場合はこの限りでない、ということですね。 

 

刑38条2

重い罪にあたるべき行為をしたのに、行為の時にその罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。

>これは具体的な事例がないと良くわからないですね。調べてみると、

「コカインだと思って所持していたものが実は覚せい剤だった」というケース。

(罪の重さは、コカイン<覚せい剤

この場合は、覚せい剤所持の罪には問われないそうです。

 

「コカイン所持の故意によって、覚せい剤を所持した」

このミスマッチを「抽象的事実の錯誤」といいます。

パズルゲームみたいな複雑さが出てきました。

 

刑38条3

法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することができる。

>これだけ読むと文章の意味は理解できるんですが、

「法律を知らない」は、「故意がない」に含まれるんじゃない?とこんがらがってきます。

 

整理すると、

「法律を知らない」=「行為が刑法に規定されていることを知らない」

「法律を知らないけど故意がある」=「行為が刑法に規定されていることを知らないけど、刑法の規定(構成要件)に当たる行為だと認識していた」

ということですね。

 

もっと違いを鮮明にすると、窃盗罪のケースに例えるなら

「法律を知らない」→「盗むことが罪だと知らない」

「故意がない」→「行為が盗むことに当たると知らない」

 

主語が違います。上は「盗むこと」で、下は「行為」。

刑法では、「盗むこと」=「罪」という条文(235条)が存在していて、その前提があった上で38条1・2で「故意」について言及しています。

 

法律を知らないうんぬんは、「この前提が当人の頭にあったかどうか」の、「故意以前の」問題なんですよね。

 

つまり38条3では「盗むこと=罪」の前提が(当人の頭の中で)成立してなくても、前提は正しくて、故意は成立する→罪も成立する(ただし情状により減刑可)ということを言っているのです。

 

ややこしいな~言葉のパズルがひとつ解けました。パズルは苦手です。

 

ニュースとかでよく聞く、警察の取り調べ結果で「殺したのは間違いない」などのフレーズ、これは「故意」が成立していることを伝えているんですね。

 

自分の犯行をそのまま口にするのはどんな気持ちだろう・・・私だったら「もう観念するしかない」ってゆう気持ちになるだろうな。

 

故意は手ごわかった・・・次回は39条「心神喪失及び心神耗弱」です。

では、さようなら~